夫婦共有名義で購入した不動産を売ることが難しい理由

公開日
2026.09.16

夫婦でお金を出し合って不動産を購入したことにより、名義が夫婦共有となっているケースは決して珍しいことではありません。しかし、共有名義不動産が増える一方で、それらをめぐるトラブルが後を絶たないということをご存知でしょうか。

名義が共有であるがゆえ、単独名義の売買よりも手続きが複雑で難しくなります。この記事では、夫婦共有名義で購入した不動産を売ることが難しいとされる理由と、具体的な売却方法についてわかりやすく解説します。

共有名義の「共有」とは

前提として、共有名義の「共有」とはひとつのものを1人ではなく数人で、管理・所有している状態を指します。そして、数人で1つのものを共有している場合に、それぞれの人がそのものについて持つ所有権のことを「持分」といいます。

勘違いしやすいところを補足しておくと、1つの不動産を持分割合2分の1で共有しているという場合には面積を半分ずつ所有しているわけではなく、不動産全体を2人で所有している状態を指しています。

夫婦で購入した場合における持分の決まり方

夫婦共有名義の不動産においては、共有の対象となる不動産を購入したときにそれぞれが負担した費用の割合によって、持分が決定されます。

たとえば、物件価格等の合計額が5,000万円で、そのうち夫が3,500万円、妻が1,500万円負担した場合における持分割合は次のとおりです。

持分割合の計算例

  • 夫:3,500万円 ÷ 5,000万円 = 10分の7
  • 妻:1,500万円 ÷ 5,000万円 = 10分の3

つまり、夫の持分が10分の7で妻の持分が10分の3ということになります。

ご注意ください

実際の負担割合と登記上の持分割合が異なる場合、その差額が贈与とみなされ、贈与税が課される可能性があります。
持分割合は実際の資金負担に応じて正確に設定するようにしましょう。

共有名義の不動産が売却しにくい理由

共有名義となっている不動産を売却する場合、共有者全員の同意と署名・押印が必要になってきます。つまり、夫婦2人の同意がなければ不動産を売却できません。

このとき、たとえ夫の持分割合が9割を占めていたとしても、妻の同意なしに売却することはできません。

そのため、万が一夫婦が離婚することになった場合において不動産を2つに分けることができるわけもなく、揉め事の原因になりやすいといえます。

共有名義の不動産を売却する4つの方法

では、夫婦共有名義の不動産を売却するにはどうしたらよいのでしょうか。具体的には下記4つの方法があります。

共有名義を解消する4つの方法

  • 全部売却して売却代金を分ける
  • 分筆して売却する
  • 自分の持分だけ売却する
  • 共有持分を放棄する

さっそく、見ていきましょう。

方法1:全部売却して売却代金を分ける

先述したように、共有名義の不動産を売却するためには共有者全員の同意が必要です。同意を得て、署名押印を済ませた後に共有不動産を売却した場合において、売却代金は共有者の持分に応じて割り振られることになります。

先程の例でいえば、夫婦共有名義で5,000万円で購入した不動産が4,000万円で売れた場合、持分割合10分の7の夫が2,800万円、持分割合10分の3の妻が1,200万円を手にすることになります。

売却価格の面でも、一番値崩れが起こりにくく、スタンダードな方法だといえるでしょう。なお、売却時における必要書類(印鑑証明や本人確認書類など)は夫婦それぞれについて必要となります。

方法2:分筆して売却する

前提として、分筆して売却できるのは土地が共有名義となっている場合であり、マンションや戸建てといった建物そのものを分筆することはできません。

分筆とは1つの土地を実際に分けて、独立した土地として新たに登記を済ませることを指します。分筆をすることにより、自身の持分に応じた土地を手に入れることができ、その分については自由に売却をすることが可能です。

なお、分筆する場合には持分割合に応じて土地を分けますが、この際土地の「面積」だけを考えて分けるのではなく土地の「評価額」も考慮して分けることになります。日当たりが良いか、道路に面しているかといった様々な事情により評価額が異なってきます。

方法3:自分の持分だけ売却する(一部売却)

自身の持分のみを他人に売却する場合、他の共有者の同意は不要です。通常の売買契約を行ったのち、所有権移転登記を済ませることになります。

とはいえ、共有持分を取得したところでその不動産がすべて自分のものになるわけではなく、どちらかというと制約が多いことから買い手がつくことは難しいでしょう。売却代金も共有であるがために、適正価格より随分低い値段で取引されることがほとんどです。

持分のみの売却にはご注意ください

共有持分だけを第三者に売却すると、残された共有者は見ず知らずの相手と不動産を共有することになります。後々のトラブルにつながりやすいため、まずはもう一方の共有者へ買い取りを打診するなど、慎重にご検討ください。

方法4:共有持分を放棄する

売却とは少々趣旨が異なってしまいますが、共有名義の解消といった観点では共有持分の放棄も選択肢の1つといえるでしょう。民法255条でも次のように定められています。

共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。

引用元:民法第255条

そのため夫婦共有名義の不動産であったとしても、妻は単独で有効に自己の持分について放棄を行うことができます(夫の承諾や同意は不要)。

なお、持分放棄は単独で行うことができますが、持分が移転したことによる所有権移転登記は他の共有者の協力を得る必要がありますので、併せて押さえておきましょう。

ご注意ください

持分を放棄すると、その持分は他の共有者へ無償で移転することになるため、
受け取った側に贈与税が課される場合があります。実行前に税理士等の専門家へご相談ください。

まとめ:共有名義でいいのか購入前によく検討しよう

今回は夫婦共有名義で購入した不動産を売却することが難しい理由について、お伝えしました。

この記事のまとめ

  • 共有名義の不動産は、共有者全員の同意がなければ売却できない
  • 持分割合は、購入時にそれぞれが負担した費用の割合で決まる
  • 売却方法は「全部売却」「分筆」「持分のみ売却」「持分放棄」の4つ
  • 持分のみの売却や持分放棄には、税金面・トラブル面の注意点がある

不動産を共有名義で所有している限り、なんらかのトラブルが生じた際は揉め事の原因となってもおかしくはありません。また、共有名義の不動産をどう売却していいか困っている場合、共有名義の売却に強い不動産会社を探すことが大切です。

自分たちでなんとかしようとせず、無用なトラブルを避けるためにも専門家に相談するようにしましょう。当社では離婚に伴う持分売買のサポートも数多く手がけております。「まず話を聞いてみたい」という段階からでも、お気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人
織瀬ゆり

娘と息子を子育て中のママライター。某信託銀行を退職後、個人事業主(フリーライター)として独立。在籍時代は主に、住宅ローン業務のほか融資関係ならびに単元未満株式をはじめとした株式事務を中心とする業務に従事。AFPや宅建士をはじめとして複数の資格を取得しており、初心者でもわかりやすい記事執筆を心がけています。

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