親子・親族・知人間売買でも契約書が重要である理由をご紹介します
不動産の個人売買時も契約書は必要ですか?
メリット・注意点を解説
不動産を個人売買する時も契約書は必要です
親子・親族・知人・元夫婦同士など、個人同士で不動産売買を行う際にも契約書の作成は重要です。数多く個人売買をサポートしてきた不動産の専門家の立場として、個人売買時の「不動産売買契約書」の作成は必須であると断言できます。なぜなら、たとえ現金一括払いでも、取引時の記録を「不動産売買契約書」に残すことで将来のトラブルに備えることができるからです。
このページでは不動産の個人売買サポートを提供している「不動産個人間売買サポートPRO」が、一戸建て住宅・土地・マンションの個人売買時にも「不動産売買契約書」が不可欠である理由を詳しく解説していきます。
なぜ個人売買でも「不動産売買契約書」が必要なのですか?
現在の民法上は「不動産売買契約書」がなくても、当事者間で売買の合意は成立できます。法令上の制限がないため、罰則もありません。しかし、不動産売買は高額であり、また複雑な内容が伴う取引です。特に個人売買では、お知り合い同士の取引であることから将来的に「言った」「言わない」のトラブルになる可能性があります。
たとえば売主買主同士の記憶や認識の間違い・取引する不動産に関係する親族からの主張・隣人からのクレームなど、不動産売買にはさまざまなトラブルが考えられ、それにきちんと対応するためには、不動産売買契約書が必要です。
契約書があることで売主・買主間のトラブルを防止できる
不動産売買は、低価格での取引であっても慎重に話を進めていくべきです。なぜなら、不動産には法律・権利問題・近隣との関係など、さまざまな観点を持ちながら進めていかないと深刻な問題へと発展するからです。
その深刻な問題を防ぐために大きな力を発揮するのが「不動産売買契約書」です。この「不動産売買契約書」には売主・買主に関する情報のほか、売買代金に関するすべての情報(物件価格・支払い方法・手付金や違約金に関する約束事・瑕疵に関する責任の所在)・借地権の有無・法的な制限の有無・災害指定区域に関する概要など、さまざまな内容を正確に残すことができます。
ここでポイントとなるのが、作成する「不動産売買契約書」が本当に「将来のトラブル」に備えた内容であるかです。不動産のトラブルを想定できる人が作成すれば、将来もその効力は発揮できるでしょう。しかし、不動産取引の知識が不十分な人が作成した「不動産売買契約書」は不備が多く、万が一の備えにならないリスクがあります。
つまり、「不動産売買契約書」は不動産の専門家に作成依頼をすることが、より安心をもたらすと言えるでしょう。
「不動産売買契約書」を作らず個人売買をした際に起こり得るトラブル例
- 知人同士だからと口約束で売買契約をして、物件を引き渡した後に雨漏り・シロアリ被害など、設備上の欠陥が発覚して修繕費用の負担に関する責任問題へ発展する
- 物件引渡し後に再建築不可物件だと判明。新築物件の建設を前提として購入したため、実現できない事態に
- 現金一括払いで売買をすることが決まり、物件の引き渡しも済ませたが、買主がいつまでも物件代金を支払ってくれず、連絡もつかない
- 売主の土地の境界に関する認識の間違いにより、物件引渡し後に隣人からクレームが。売主と隣人の主張が異なり、問題が解決しない
- 知人同士でマンションの売買を約束して話を進めていたが、買主の親の介護が発生したことで白紙に。売主はすでに引っ越してしまい、違約金に関する取り決めをしていなかったため、様々な賠償問題へと発展
「不動産売買契約書」が作らない場合に起こり得るリスクとは?
売買代金の支払いに関するトラブルが生じる
個人売買は「よく知った仲だから」という理由で、すべての決め事をルーズにしてしまいがちです。売買代金の支払いについても知り合い同士ゆえに「お金」という強く求めづらい内容であることから、次第に問題へと発展するケースがあります。たとえば、以下のような内容です。
- 支払い期限を明確にしていなかったため、いつまでも代金を振り込んでもらえない
- 物件引き渡し後に買主から大小様々な設備の問題を指摘され、想定外の費用を請求され続けている
- 手付金を手渡しで払ったにも関わらず売主から「もらっていない」と主張されている。通帳の記録もないため、支払った証明ができない。
- 住宅ローンを利用せず、独断で直接の分割払いを設定。しかし、買主からの支払いが次第に遅延するようになり回収できずにいる。
このようなトラブルはいずれも「不動産売買契約書」があれば、適切に問題を解決できます。売買契約を締結する前に約束事を決め、記録に残すことをすれば何かあった場合でも振り返り、対処することができるでしょう。
物件の引渡し時期に関するトラブルが起きる
不動産取引における重要な手続きのひとつが「所有権の移転」です。所有権は文字通り物件を所有している権利であることから、移転を行わない限り、正式に持ち主が変わることはありません。しかし、個人売買ではこの「所有権移転」をおろそかにされるケースが多く、権利上のトラブルが生じるリスクが高まります。
しかし、「不動産売買契約書」があれば、所有権に関する以下のようなトラブルを防ぐことができます。
- 物件引き渡しの正式な日時の設定
- どのタイミングで所有権を移転するかの取り決め(例:物件代金の支払いと同時)
契約不適合責任の所在が曖昧になる
不動産売買契約書がない場合、「契約不適合責任」において売主・買主双方に重大なリスクが発生します。この「契約不適合責任」とは、2020年4月の民法改正により、「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」へと名称変更された内容で、売主が買主に引き渡した不動産が契約内容に適合しない場合に、売主が負う責任のことです。つまり、「契約」を証明するものがない場合は、その責任が売主・買主どちらにあるかを明示できない問題が発生します。
通常「契約不適合責任」は次のような場合に、契約書に記載した事項のもと適切に対応することができます。
- 物件の建物や設備が契約内容と異なる場合に適用
- 隠れた欠陥が判明した場合も対象
しかし、不動産売買契約書がない場合は「契約不適合責任」を追求するための証明要素がなく、次のようなトラブルを招く可能性があります。
「契約不適合責任」に関連した売主が抱えるリスク
- 契約内容が曖昧なため、買主が求める「契約内容」の範囲がルーズになる
- 責任期間の制限を設けていないことで、いつまでも買主の要求が続く
- 免責事項の合意がないため、想定以上の損害賠償を請求される
「契約不適合責任」に関連した買主が抱えるリスク
- 売主が訴える建物や設備に関する品質・性能の証明が困難
- 口約束だけでは法的な立証が難しく、正当に訴えたくても権利行使が制限される
住宅ローンが組めない
銀行・金融機関は住宅ローンを利用したい方に対しては「不動産売買契約書」の提出を求めます。この場合、売主様ご自身が作成した「不動産売買契約書」ではなく、不動産仲介業者が作成した書面であることを必須としています。
なぜなら、銀行は金利の低い住宅ローンを別の用途で使われることを懸念しているため、正当な取引である証明として第三者の不動産業者が作成する「不動産売買契約書」を求めるのです。そのため、契約書の作成費用や仲介手数料の節約などを目的として個人間売買を希望している場合は、その要望を叶えることは困難となるでしょう。
なお、住宅ローンの利用は「不動産売買契約書」以外にも、不動産仲介業者だけが作成できる「重要事項説明書」の提出も必須としています。したがって、住宅ローンを使って売買を行いたい場合は仲介業者の介在は欠かせません。
つまり、売主・買主には不動産業者へ支払う仲介手数料が発生し、その費用負担に関してトラブルが起きる可能性もあります。
不動産の個人売買時に契約書に記載すべき内容とは?
不動産個人売買契約書に記載すべき主な項目
- 売主・買主の氏名・住所・連絡先
- 売買を行う物件の詳細(住所・面積・構造など)
- 物件の代金
- 物件代金の支払方法
- 物件の引渡し日
- 所有権移転のタイミング
- 手付金・違約金の取り決め
- 契約不適合責任に関して
- 固定資産税・都市計画税の精算
- 抵当権の有無と抹消の対応
- その他物件に関連した法令について
不動産売買契約書に必要な収入印紙について
売買契約書が課税対象である理由と印紙の金額について
不動産売買契約書には、売買代金に応じた印紙税が課税されます。これは契約書が課税文書に該当するためで、印紙税額分の収入印紙を購入し、契約書に貼付して消印することで納税を行います。消印を忘れた場合、消されていない印紙の額面金額に相当する過怠税が徴収されるため注意が必要です。
書面での契約締結では、物件価格に準じた印紙代として数千円から数万円の費用が発生します。具体的には、売買代金が1,000万円を超え5,000万円以下の場合は1万円、5,000万円を超え1億円以下の場合は3万円が目安となります。不動産取引では、この印紙税も諸費用の一部として事前に準備しておくことが重要です。
個人間の売買でも印紙税の課税対象となる理由
印紙税は契約書の作成者が個人か法人かに関係なく、課税文書に該当する文書を作成した場合に課税される税金です。不動産売買契約書は印紙税法上の「不動産の譲渡に関する契約書」に分類されるため、売主・買主が共に個人であっても印紙税の課税対象となります。
これは契約書そのものの性質に基づく課税であり、取引当事者の属性は関係ありません。個人間取引でも必ず印紙を貼付し、適切に消印を行う必要があります。
なお、私たち「不動産個人間売買サポートPRO」では、印紙代が不要となる「オンライン電子契約」をご用意しています。個人売買の実績豊富なスタッフが立会いのもと、リモート契約を行いデータで契約書を発行します。このオンライン契約の場合は、物件価格に関係なく印紙代の発生はありません。ぜひご利用ください。
個人売買時の印紙税の費用負担は売主?買主?
印紙税は物件価格に応じて数万円程度の費用が発生するため、決して軽視できない負担となります。そのため、売主・買主間で印紙税の負担割合について事前にしっかりと協議し、合意内容を契約書に明記しておくことが重要です。
個人売買における印紙税の負担には法的な決まりはなく、売主・買主のどちらが支払っても問題ありません。知人同士・親子間・親族間など、当事者同士の関係性や取引の経緯などを考慮して決定するケースが多く、費用を折半する方法も選択肢の一つです。この点についても確定したうえで、きちんと契約書に残しておきましょう。
専門家が提供する「個人売買サポート」を利用するメリット
不動産の個人売買では、契約書の不備により深刻なトラブルが発生するケースが後を絶ちません。高額な不動産取引において、専門家による契約書作成は単なる手続きではなく、重大なリスクから身を守る重要な対策といえます。
個人売買でよく見られる代表的なトラブルとして、引渡し後の設備故障や雨漏りなどの欠陥について「誰が修繕費を負担するか」で揉めるケースがあります。このようなトラブルを防ぐことを目的として、私たちのような不動産の専門家は契約不適合責任の範囲や免責事項を明確に記載し、このような紛争を未然に防ぎます。
また、口頭での約束だけでは「言った・言わない」の争いになりがちですが、不動産専門家が作成した契約書は客観的な証拠となり、万一の訴訟時にも立証負担を大幅に軽減します。また、住宅ローン審査で必要な重要事項説明書の準備不足により融資が受けられないトラブルに対しても、専門家の関与により回避できます。
不動産の専門家へ契約書を作成する場合、費用のご負担をお願いすることにはなりますが、その分安心・安全なお取引を実現できますので、将来に備えた保険として是非不動産の専門家へ契約書の作成を依頼することをぜひご検討ください。
個人売買の方向けに契約書作成する際の不動産業者・司法書士の役割の違いについて
近年不動産の個人売買のサポートサービスは様々あり、大きく分けて不動産業者が提供するサポート・司法書士が提供するサポートの2パターンあります。各専門家の特徴を理解して適切に活用することが、安全な取引実現の鍵となります。詳しく解説していきましょう。
個人売買時における不動産仲介業者の役割とは?
個人売買時における私たち「不動産個人売買サポートPRO」のような宅地建物取引業の免許を持つ不動産仲介業者は、不動産仲介業者は不動産のスペシャリストであるため、さまざまな観点から売主・買主双方に対してトラブルを防ぐための記録を残すことができます。契約不適合責任の明記やトラブル防止のための専門的なチェックも行い、物件査定から決済まで包括的なサポートを提供することが可能です。
また、契約書作成と共に重要事項説明書の作成が行えます。いずれも住宅ローンに必要な書類であるため、銀行・金融機関から融資を受けたい人は仲介業者へ相談することで大きなメリットを得られるでしょう。
重要事項説明書とは
不動産の仲介業者が不動産売買契約書と共に作成できる重要事項説明書は、物件の概要や法令制限、住宅ローンの内容など重要情報を記載した書面であり、仲介業者だけが作成できる特別な書類です。また、この書面のもとで宅地建物取引士による契約者への口頭説明が法律により義務付けられています。そもそも、住宅ローン利用時には金融機関が重要事項説明書の提出を求めるため、融資を受けたい人は仲介業者に相談することで円滑に話が進みます。
不動産仲介業者が専門とする代表的な内容
不動産仲介業者が専門とする代表的な内容をご紹介します。この内容は契約書への反映にも大きな影響を及ぼします。安心安全な取引を目指して契約書を作成したいなら、以下のような内容を専門とする不動産仲介業者へご相談されることをおすすめします。
- 売主・買主間の調整(スケジュール進行・取り決め内容の提案)
- 物件価格の設定アドバイス(相場調査・贈与税発生リスクを踏まえた価格設定の提案)
- 物件に関する調査(法務局への調査代行・権利問題の確認・法令調査など)
- 住宅ローンに関する手続き(利用する銀行の提案・事前審査申込み代行・銀行本審査に必要な書類作成)
- 取引対象の不動産物件にまつわるご質問対応
- リフォーム会社の紹介
- 信頼のおける各種士業・専門家のご紹介
- マンション管理組合への調査代行
- 住宅診断(ホームインスペクション)の提供
個人売買時における司法書士の役割とは?
司法書士は不動産登記手続きの専門家として、所有権移転登記の代行が主要業務となります。契約書の内容が登記手続きに支障がないかの確認や法的助言を提供し、決済時には安全な資金決済に立ち会います。また、登記に必要な権利証や印鑑証明書などの書類準備もサポートし、取引の最終完了を法的に担保する重要な役割を果たします。
ただし、司法書士は不動産仲介業者ではないため、住宅ローンに関する手続きを行うことができません。なぜなら、不動産仲介業者だけが作成できる「重要事項説明書」を作ることが不可能であるためです。一部の司法書士は宅建免許を保有しているため、司法書士への相談をご検討の場合は、そのような方にご相談されると良いでしょう。
まとめ
不動産の個人売買において、契約書の作成は法的な義務ではありませんが、高額で複雑な取引におけるトラブルを防ぐために必須といえます。親子間や知人同士の取引であっても、「言った・言わない」の争いや契約不適合責任を巡る紛争、住宅ローン利用時の問題など、様々なリスクが潜んでいるためです。
適切な契約書があることで、売買代金の支払い条件、物件の引渡し時期、所有権移転のタイミング、契約不適合責任の範囲などが明確になり、将来のトラブルを未然に防げます。また、印紙税の負担割合についても事前に協議し、契約書に明記しておくことが重要です。
個人で契約書を作成する場合、専門知識不足による記載漏れや法的不備のリスクがあります。そのため、不動産仲介業者や司法書士などの専門家に依頼することで、より安全で確実な取引が実現できます。費用はかかりますが、高額な不動産取引における保険として、専門家のサポートを受けることを強くおすすめします。