夫婦共有名義で購入した不動産を売ることが難しい理由

夫婦でお金を出し合って不動産を購入したことにより、名義が夫婦共有となっているケースは決して珍しいことではありません。

しかし、共有名義不動産が増える一方で、それらをめぐるトラブルが後を立たないということをご存知でしょうか。

名義が共有であるがゆえ、単独名義の売買よりも手続きが複雑で難しくなります。

今回は、夫婦共有名義で購入した不動産を売ることが難しいとされる理由と、具体的な売却方法についてまとめてみました。

不動産個人間売買サポートPRO・コラム担当:織瀬ゆり

娘と息子を子育て中のママライター。某信託銀行を退職後、個人事業主(フリーライター)として独立。在籍時代は主に、住宅ローン業務のほか融資関係ならびに単元未満株式をはじめとした株式事務を中心とする業務に従事。AFPや宅建士をはじめとして複数の資格を取得しており、初心者でもわかりやすい記事執筆を心がけています。

共有名義の「共有」とは

前提として、共有名義の「共有」とはひとつのものを1人ではなく数人で、管理・所有している状態を指します。

そして、数人で1つのものを共有している場合に、それぞれの人がそのモノについて持つ所有権のことを「持ち分」といいます。

勘違いしやすいところを補足しておくと、1つの不動産を持分割合1/2で共有しているという場合には面積を半分ずつ所有しているわけではなく、不動産全体を2人で所有している状態を指しています。

夫婦で購入した場合における持分の決まり方

夫婦共有名義の不動産においては、共有の対象となる不動産を購入したときにそれぞれが負担した費用の割合によって、持分が決定されます。

なお、不動産の購入価格だけでなく、引っ越しや家具購入費なども代金に含まれます。

たとえば、物件価格等の合計額が5,000万円でそのうち夫が3,500万円、妻が1,500万円負担した場合における負担割合は次のとおり。

つまり、夫の持分が10分の7で妻の持分が10分の3ということになりますね。

共有名義の不動産が売却しにくい理由

共有名義となっている不動産を売却する場合、共有者全員の署名および押印が必要になってきます。つまり、夫婦2人の同意がなければ不動産を売却できないことに。

このとき、たとえ夫の持分割合が9割を占めていたとしても、妻の同意なしに売却することはできません。

そのため、万が一夫婦が離婚することになった場合において不動産を2つに分けることができるわけもなく、揉め事の原因になりやすいといえます。

共有名義の不動産を売却するには

では、夫婦共有名義の不動産を売却するにはどうしたらよいのでしょうか。具体的には下記4つの方法があります。

さっそく、見ていきましょう。

全部売却して売却代金を分ける

先述したように、共有名義の不動産を売却するためには共有者全員の同意が必要です。

同意を得て、署名押印を済ませた後に共有不動産を売却した場合において、売却代金は共有者の持分に応じて割り振られることになります。

先程の例でいえば、夫婦共有名義で5,000万円で購入した不動産が4,000万で売れた場合、持分割合10分の7の夫が2800万円、持分割合10分の3にあたる1200万円を妻が手にすることに。

売却価格の面でも、一番値崩れが起こりにくく、スタンダードな方法だといえるでしょう。

なお、売却時における必要書類(印鑑証明や本人確認書類など)は夫婦それぞれについて必要となります。

分筆して売却する

前提として、分筆して売却できるのは土地が共有名義となっている場合であり、マンションや戸建てといった建物そのものを分筆することはできません。

分筆とは1つの土地を実際に分けて、独立した土地として新たに登記を済ませることを指します。

分筆をすることにより、自身の持分に応じた土地を手に入れることができ、その分については自由に売却をすることが可能です。

なお、分筆する場合には持分割合に応じて土地を分けますが、この際土地の「面積」だけを考えて分けるのではなく土地の「評価額」も考慮して分けることになります。

日当たりが良いか、道路に面しているかといった様々な事情により評価額が異なってきます。

自分の持分だけ売却する(一部売却)

自身の持分のみを他人に売却する場合、他の共有者の同意は不要です。

通常の売買契約を行ったのち、所有権移転登記を済ませることになります。

とはいえ、共有持分を取得したところでその不動産がすべて自分のものになるわけではなく、どちらかというと制約が多いことから買い手がつくことは難しいでしょう。

売却代金も共有であるがために、適正価格より随分低い値段で取引されることがほとんどです。

共有持分を放棄する

売却とは少々趣旨が異なってしまいますが、共有名義の解消といった観点では共有持分の放棄も選択肢の1つといえるでしょう。

民法255条でも

「共有者の1人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する」

と定められています。

そのため夫婦共有名義の不動産であったとしても、妻は単独で有効に自己の持分について放棄を行うことができます。(夫の承諾や同意は不要)

なお、持分放棄は単独で行うことができますが、持分が移転したことによる所有権移転登記は他の共有者の協力を得る必要がありますので、併せて抑えておきましょう。

共有名義でいいのか購入前によく検討しよう

今回は夫婦共有名義で購入した不動産を売却することが難しい理由について、お伝えしました。

不動産を共有名義で所有している限り、なんらかのトラブルが生じた際は揉め事の原因となってもおかしくはありません。

また、共有名義での不動産をどう売却していいか困っている場合、共有名義の売却に強い不動産会社を探すことが大切です。

自分たちでなんとかしようとせず、無用なトラブルを避けるためにも専門家に相談するようにしましょう。

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