外国人が不動産を個人売買する際、住宅ローンは使える?

今現在、日本では在留する外国人が200万人を超え、いまなおその数は増え続けています。その中には日本で住宅を購入し、住みたいと考えている外国人も少なくありません。

そして、外国人に不動産の所有を認めていない国が多い中、日本では日本人と同じように不動産の購入と所有を認めています。

とはいえ、「外国人が不動産を個人売買する場合、住宅ローンを利用できるのか」と不安を感じている人も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、外国人でも住宅ローンが使えるのか、そして借り入れる際の留意志向について解説していきます。

不動産個人間売買サポートPRO・コラム担当:織瀬ゆり

娘と息子を子育て中のママライター。某信託銀行を退職後、個人事業主(フリーライター)として独立。在籍時代は主に、住宅ローン業務のほか融資関係ならびに単元未満株式をはじめとした株式事務を中心とする業務に従事。AFPや宅建士をはじめとして複数の資格を取得しており、初心者でもわかりやすい記事執筆を心がけています。

そもそも、外国人が不動産購入時に住宅ローンは組めるのか?

結論からいうと、一定の条件を満たせば、不動産購入者が外国人の場合でも住宅ローンを組むことは可能です。

ただし外国人が住宅ローンを組むにあたって、「永住権」の有無が重要となります。

というのも、住宅ローンの多くは10年以上の長期にわたって返済する必要があることから、日本に定住しているかどうかが判断の決め手となるケースがほとんどです。

永住権のない外国人との間で住宅ローンを組んでしまうと、万が一数年で帰国されてしまった場合に住宅ローンの回収が困難となり、金融機関側からすると極めてリスクが高くなります。

そのため、そうしたリスクを抱えてまで住宅ローンの融資を行う金融機関は少なく、3年~5年などの短期在留資格では住宅ローンを組めないと考えてほぼ間違いありません。

また、永住権があれば必ず住宅ローンを組めるというものではなく、他条件も合わせて満たしておく必要があります。

永住権がなくても住宅ローンを組める可能性はあるのか

外国人が不動産購入時に住宅ローンを組む場合、基本的には「永住権」が必要であることは先にお伝えした通りです。

では、永住権がない場合は絶対に住宅ローンが組めないのかというと、一概にそうではありません。

日本にあるいくつかの金融機関では、連帯保証人に日本人または永住許可を有している配偶者を設定することで、住宅ローンを組めるケースもあります。

中には夫婦のどちらも永住権を有していない場合であっても、住宅ローンの融資を検討してくれる金融機関もありますが、その数は極めて少なく、実際に借りられる可能性は限りなく低いでしょう。

永住権がない状態で住宅ローンを組むことは、そう簡単ではありません。不動産の購入する際には、この事実を頭に入れておくことが大切です。

どこの銀行でも申込み可能なのか?

住宅ローンの申込みにあたっては、まず申込みをしようと考えている金融機関で銀行口座を開設しなければなりません。

外国人が日本で口座を開設するうえで「在留カード」や「住民票」が必要となりますが、この「在留カード」の取得がまず一つ目のハードルになるでしょう。

90日以下の観光ビザなど、在留期間が3カ月未満の場合は在留カードが発行されないため、そもそも口座の開設ができません。(6カ月未満でも非居住者に該当し、非居住者円預金の口座は作れるものの、一般的な普通口座は開設不可)

口座が開設できそうな金融機関に目星をつけたうえで、外国人向け住宅ローンの取り扱いがあるか、それらの実績はどうなのかを確認しておくとスムーズかもしれません。

また、外国語にも対応しているか確認しておくと、書類作成時(不動産売買契約書や重要事項説明書)をはじめローン締結までのコミュニケーションに不安を抱かずに済むでしょう。

ローンを借り入れた金融機関とは長期的に付き合っていく可能性が高いことから、複数の金融機関を比較検討したうえで納得のいく先を選ぶようにしてください。

外国人が不動産を購入する際の住宅ローン審査のポイント

ここでは外国人に住宅ローンを提供する際、金融機関が審査で見ているポイントについて見ていきましょう。

もちろんこれがすべてではなく、金融機関によっても違いがあることから、一般的な審査項目のポイントとして参考にしてください。

居住年数

多くの金融機関では、日本での居住年数を審査項目にしています。不動産購入を目的とした融資を受ける際は、基本的には長期滞在が条件となり、目安として入国から5年以上経過しているかどうかが審査のポイントになるでしょう。

特に永住権がない場合、長期居住が確認できることで住宅ローンの審査が受けられる可能性があります。居住年数が少ないと、申込すら叶わないことがあると認識しておいたほうがよいでしょう。

必要書類をきちんと用意できているか

外国人が住宅ローン申請をする際には、国内に住む日本人に比べて多くの必要書類を揃えなければなりません。それらの書類が漏れや不備なく、しっかりと用意できているかどうかも審査のポイントです。

参考までに、外国人が住宅ローンの審査を受けるときに必要とされる不動産購入時に揃えるべき書類を以下にピックアップしてみました。

  • パスポート・免許証・保険証などの身分証明書
  • 源泉徴収票(※個人事業主や自営業者は不要)
  • 確定申告書(※個人事業主や自営業者のみ必要)
  • 住民税決定通知書
  • 特別永住者証明書・在留カード・外国人登録証明書
  • 納税証明書
  • 取得する物件資料
  • 返済予定表など住宅ローンに関する資料

不備や記入漏れによる差し戻し等のトラブルを防止する観点からも、ひとつひとつの書類を丁寧に記入し、忘れずに提出するよう心がけましょう。

年齢と健康状態

日本人と同様に年齢と健康状態は審査のポイントです。

完済予定時の年齢を70歳~75歳程度に設定している金融機関が多く、健康な状態で不動産購入金額を返済をしていけるのかを審査されることとなります。

年齢や健康状態によっては、借入金額を減額せざるを得なかったり借入自体を断られたりする可能性があることを覚えておきましょう。

申込者本人の勤続年数と最低収入

安定した収入が期待できるかも問われるため。勤続年数や最低年収もポイントになります。

金融機関の中には申込者の職業を「正社員または契約社員に限る」と定めているところも多く、無職の場合にはいくら資産があっても申し込みができないケースがほとんどです。

勤続年数については、2年~3年以上を条件として掲げている金融機関が多いものの、稀に6カ月以上としている金融機関もあります。

なお、申込書には勤務期間を記入する欄が設けられており、無職の期間が長い場合には多少なりとも審査に影響する恐れがあるので注意しましょう。

また、最低年収についても金融機関ごとに一定の基準を満たすことを求められるため、安定収入のない人は審査に通りにくくなります。

返済負担率

住宅ローン審査では「返済負担率」も大きなポイントです。返済負担率とは、年収に対する年間の返済支払額の割合を指し、年間で支払うべき金額が多くなるにつれて返済負担率も高くなります。

返済負担率が高いと、ローンの返済が滞ってしまったり、返済が遅延したりといったリスクが高くなります。

金融機関も貸し倒れのリスクを防ぐため、返済負担率が高い人に対して借入可能額を制限するほか、場合によっては貸付自体を断るケースも珍しくありません。

なお、返済負担率の基準は金融機関によって異なるものの、30%~35%程度が一般的とされています。

返済負担率が高くなってしまっている場合は借入額を見直すほか、頭金を多くして返済負担率を下げるなどといった対策が必要になるでしょう。

銀行が懸念する事項は何か?

ここでは主に、永住権を持たない外国人を対象とした懸念点についてまとめてみました。

帰国のリスク

永住権がない外国人の場合、住宅ローンの残債が残っている状態で帰国してしまう可能性がゼロとは言い切れません。

住宅ローン完済前に帰国されてしまうと追跡が困難であることはもちろん、金融機関としては債権の回収が滞ってしまいます。

そのため、永住権がない場合には住宅ローンの申し込みを受け付けていない金融機関が大半です。

保険会社の保障問題

不動産購入額の借入時、多くの金融機関では「団体信用生命保険(以下、団信)」をはじめとした保険への加入を義務付けているケースがほとんどです。

団信とは、契約者本人が死亡あるいは高度傷害状態になったときに、保険金で住宅ローンの残債を支払ってくれる保険のことを指します。外国人がこの団信を申し込む場合、永住権の有無を確認される恐れが高く、永住権がない場合には注意しなければなりません。

具体的には永住権をもつ配偶者や日本国籍のある人に保証人となってもらうなどといった対応策を講じる必要があるでしょう。

言語問題

これは永住権の有無に限った話ではありませんが、日本語でのコミュニケーションが難しい場合、住宅ローンの契約にあたって苦労する恐れがあります。

そのため、住宅ローンの借り入れを検討している場合には、日本についてある程度の言語能力を身につけておくようにしましょう。

収入面の不安

ローンの契約者となる外国人が安定していない職についていない場合、債権回収が困難になる恐れから金融機関が融資を嫌がることがあります。

安定した職に就いていない場合のある外国人への融資は、金融機関からすると債権回収が困難になる恐れが高いと判断され、住宅ローンの利用を断られるケースも少なくありません。

定職に就いていて、一定以上の安定収入が見込めるのであれば融資金融機関もあるので、安定収入を得られる職に就いておくのは大切だといえるでしょう。

外国人が不動産を住宅ローンを使う際、利息は日本人と同じか?

永住権のある外国人であれば、一般的な日本人と同じ住宅ローンが組めると考えて大丈夫です。

ただし、永住権がない外国人の場合には万が一住宅ローンを組めたとしても、利息が通常より高く設定されている傾向にあります。

その理由として、日本人よりも債権の回収が困難になるリスクが高いことが挙げられるでしょう。

外国人が住宅ローンを利用する際は、利息の割合や実際の返済額を前もってきちんと確認するように心がけることが大切です。

不動産購入時の借入可能額は日本人と同じか?

永住権があり、定職のある外国人を対象とした場合、借入可能額は日本人が借りる場合とそれほど差がありません。

しかし、借り入れるにあたってそれぞれの金融機関が諸条件を設けていることが多く、事前にしっかりと調べて置く必要があるでしょう。

なお、永住権のない外国人を対象とした住宅ローンを取り扱っている金融機関もありますが、融資条件が厳しいことに加え金利も高い傾向にあります。

そして、外国人の中には日本人と異なって頭金を用意しない人も多く、結果として借入可能額が下がってしまうことも珍しくありません。

日本人と大差なく、スムーズに借入を進めるためにも、頭金を多めに用意しておくなどといった対策を講じておくようにしましょう。

まとめ

日本では外国人であることを理由に、住宅ローンを組めないといったことはありません。

ただし、永住権の有無や言葉の問題などいくつかの諸条件をクリアする必要があり、借り入れるまでにそれ相応の時間と準備が必要になるでしょう。

他にも、住宅ローンを借り入れる際は手続き書類の記入をはじめ、慣れない作業が多くなることから借入申請の前に個人間不動産売買の専門家に相談してみることをおすすめします。